四言で綴る斜な日記。毎日更新する予定でした。
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顔についてました。模様が付いていて気持ち悪かったです。学校に枕を持参しよう……
PR Aさん「難しいね。タマゴ積み」 Cさん「コロンブスみたいにはいかないよね~」 Aさん「もうちょっとで二段……ああミスった!」 Bさん「あえてツッコまないさ……」 最近PCがおかしいのです。 せっかく書きためた小説をおじゃんにしたくないので、ここに置いておくことにします。 カテゴリ:「小説保管庫」からご覧になれます。
腹部。手が突き抜ける。
「すげえよな」 感嘆の言葉を漏らしながら私の腹の中で手を振る彼。語弊があるかもしれないが、確かに「腹の中」なのだ。 「スカスカだな……ハル、痛くないのか?」 痛いとすれば、それは彼の頭のことだろう。 「別に……感覚は無いわね」 彼の手が、私の半透明で青白い体をこれでもかと言うほどに掻き回す。私の体は触ることが出来ない。特別な場合を除き、私への物理的な干渉は全て無意味に終わる。 「エミ、こっち来てやってみろよ。奇跡体験だぞ!」 ついには手を激しく上下に振り始めた。 「ケンジ! ダメよ。ハルがかわいそうじゃない」 エミは良き理解者だが、如何せんどこかズレている。 「いいじゃんか。減るもんじゃないし」 私の神経が磨り減るよ。 「じゃあ、ハル。自分の体なんだから、少しは触ってみろよ」 ケンジが『私』の方を向いて言った。あくまで私の方ではなく。 「えー? やめとくよ。だって痛そうだもん」 『私』が言ってることは分からないでもない。 「こっちのハルは痛くないって言ってるぜ。試すだけ試してみろよ」 「自分の体に手を突っ込むなんて正気の沙汰じゃないよ」 「んー、そうか……ま、いいけど」 「もうすぐ鐘が鳴るよ。そろそろ席に着こう」 いい加減うざったくなってきたケンジの猛攻が止まる。さすがエミ。 三人は各々の席に着き、次の授業の準備をする。暇になった私はそそくさと窓から退出する。 なんでこんな事になったのだろう。虚空を漂いながら思う。 私がこのような状態――幽霊となったのは、つい昨日の事だ。ただ、私の記憶は、昨日――特に朝から昼までの部分が欠落している。その時に何かあったのだろうと言う事は想像に難くない。 太陽なんて消えてしまえ。そんな悠長なことを考えていた、極暑の朝。 「で、こっちがハル」
清閑な廊下。三人だけの小さな世界に、パタパタと足音がこだまする。……二人分の。
「エミ……ごめんね。私のせいで……」 出来得る限りの申し訳無さをこめて、エミに言った。 「まったくだな。エミが倒れるのも無理はないぜ」 ケンジに言ったつもりはないが。 私に振り回されてふらふらになったエミは、学校に着くやいなや失神して倒れてしまった。その後すぐに意識を取り戻したのは不幸中の幸いといったところか。 「私の方こそ。心配かけてごめんなさい」 罪悪感で満ち満ちている私の心を察した言葉だったのだろう。が、無理して強がられると余計に申し訳無さが増す。 「そ、それよりもこれは……やっぱり、恥ずかしい」 天地が逆転しようとも、私にだけはやらないだろう。確信できる。 「病人が何言ってんだ。素直に甘えとけよ」 ケンジの背中にはエミが嬉しそうに乗っかっていた。まるでいとおしい物にほお擦りするかのように、まるで大切な物を抱きしめるかのように、 エミはその幸せそうな顔をケンジの肩に乗せていた。エミの心はすでに夢の中…… 「チッ」 ……私の口から出た? 「ん? どうした、ハル」 「……なんでもない」 時々、自分で自分が解らなくなる。理解不能な嫌悪、憎悪。不意に私の心を支配し、不意に去ってゆく。今までも何度かあったが、今回のは……我を忘れるほど強力だった。 「んーと、保健室はどこだっけ?」 エミは顔を離し、不思議そうに言った。 「知らずに歩いてたの?」 「仕方ないわ。バカだから」 「変な同情するな! で、どこだ?」 「三階の突き当たり。えっと、事務室横の階段を上がった方が早いわ」 違う。中央階段を通った方が早い。エミが指した方は、むしろ遠回りだ。 「三階……遠く感じるな」 エミ…… 「ハ、ハル……? 顔が怖いよ?」 う……またか。刹那の忘我。不愉快だ。 「気のせいじゃない? 至っていつも通りの顔よ」 心配させまいと笑顔で返す。エミはまだ訝っているようだったが。 「眉間にしわが寄ってたぜ……そうか! 大を我慢して――」 「黙れケンジ」 「小だと言うのか?」 「消え失せろバカケンジ」 「ひっでえなぁ」 セクハラ発言を躊躇無く発するケンジの背中で、エミがどこか遠い目をして呟いた。 「仲いいね……」 『ぜんぜん!』 私とケンジは勢い良く否定した。 「ほら、息ぴったり」 『違う!』 私とケンジが否定するたびに、エミの顔に物悲しさが募ってゆく……ような気がした。 「うらやましいな……」 『どこが!』 エミは含みを乗せた笑顔で漏らす。 「……そこが」
まるでもう一人、自分がいるかのような感覚。いつ何時現れるか分からない、不安定な自分を私は疎ましく思った。制御も出来ない。鬱陶しい。
「おい、根暗少女」 コイツには縁の無い悩みなのだろうな。机に手をつくケンジに、気怠く返す。 「誰が根暗少女だって?」 「給食、取りに行かないのかよ」 もうそんな時間か。 「並ぶのが嫌いなのよ。アンタは愚鈍に並んでなさい」 「まったく。そんなだから友達もろくに出来ないんだ」 「余計なお世話。私は孤独が好きなのよ」 「孤独、ねえ……ま、いいけど」 ケンジは肩をすくめて列に並んだ。 「アイツのどこが良いんだか……理解に苦しむわ」 エミはウザイの一言に尽きるケンジのどこに惹かれたのだろう。 「ハル、一緒に食べよ!」 この子の思考回路を覗いてみたいな。 「大丈夫なの?」 「うん、大丈夫。軽い熱中症だそうだから」 意外にも本当に大丈夫そうだ。これで少しは私の罪悪感も晴れると言うものだな。 「あれ? 給食持ってこないの?」 「夏バテかしらね。食欲が無いのよ」 軽い嘘だ。食べる気がしないのは確かだけど。 「そんな時こそ食べなきゃダメだよ。ほら、体力つけなきゃ」 「エミに言われるとはね。私も末期かしら」 「もう、またそうやって捻くれるんだから」 後ろでカタカタと食器のぶつかる音がした。 「ほら。優しいケンジ君が可哀想な捻くれ少女のために持ってきてやったぞ。大地に突っ伏して感謝しろ」 盆に乗っかった給食が私の机に乗る。 「ん、気が利くじゃない。珍しく」 「人の親切は素直に受け取れ」 碗状の食器の中にウズラのゆで卵が山のよう。 「どこが親切!?」 「大好物、だったよな」 「ええ! この世で最も疎ましき食べ物よ!」 「好き嫌いはダメだよ、ハル。卵はきっと栄養付くんだから」 「ほら、エミが推奨してるんだ。全部かっ込め」 「冗談!」 「じゃ、俺が取り押さえるから」 「私は口に卵を入れるわね」 「どこでそんな打ち合わせを!?」 ケンジの執拗な猛攻とエミの矢継ぎ早な凶行にいささかの倦怠感を覚えながら、私は思った。 なんだ。杞憂だったじゃないか。エミの悲しそうな顔、私の不可解な感情、全ては杞憂。何も気にすることは無い。いや、むしろ気にするべきはエミの恋路ではないか。気弱なエミは私がフォローしてやらなければ駄目だ。うん。こういう事には慣れていないが、応援くらいならできるだろう。 「今だ! エミ、卵を!」 「はい、口開けて」 「これは立派な犯罪よ! 私に何の恨みが……ふぐっ」 喋っている途中に突っ込むのは反則だ。呼吸困難になってしまう。 「一個ずつじゃあ時間が掛かり過ぎないか? どうせなら」 「まとめて全部? それはちょっとハルが可哀そう」 「大丈夫だって。男か女か分からない風体してんだから」 関係ないし余計なお世話だ! 「それもそうだね」 納得しないの! 「じゃ、流し込みますー」 「こ、この非道! 少しはインターバルを……ふがっ」 喋ってる途中はやめろ!
土砂降りの空はウズラと相まって私を酷く憂鬱にさせる。
どうにか吐かずに放課後まで耐えたけれども、そろそろ限界が訪れようとしていた。 「エミ……私が嘔吐したら、迷わず見捨てていいわ」 「ごめんなさい。ここまで嫌いとは思ってなかったから……」 「わかった。お前のゲロを見たら即刻退散させてもらうぜ!」 「誰のせいだと思ってんのよ!」 さて、このざんざん降りでは帰るに帰れない。家まではかなりの距離があるから、無理矢理強行突破などと言う事は不可能だろう。 「どうするよ、この雨。止みそうに無いぜ」 私たちは玄関で立ち尽くしていた。大粒の雨と落雷を眺めながら。エミがぼんやりと雨粒を眺めて言った。 「傘って持ってる?」 「朝はかんかん照りだったんだぜ? んなもん持ってくるやつ居ねえよ」 「そっか……」 その時、近くで雷が落ちた。煌く閃光、轟く雷鳴。 「きゃぁあっ!」 エミはおもむろに叫び、近くにあった手頃なもの――ケンジの腕にしっかと掴まった。 「おぉう!?」 ケンジの方もだいぶ驚いたようで、抱きつかれた途端に体が硬直した。みるみる真っ赤に染まっていくケンジの頬―― ――離れろ 「……っ!?」 ノイズのような思考が頭の中を巡る。反芻し、刻み込まれてゆくこの感情。また……か。もどかしい! 「ウズラのせいかしらね……気分が悪いわ……」 「いつも低血圧だとか言って気分悪そうにしてんじゃねえか。朝と大差ないぜ」 「ハル……大丈夫?」 「ええ、今のところはね」 とりあえず、早々に帰宅しよう。そして、早めに寝よう。洗面器は必須だな。 私はこの悪天を睨みつけた。傘が無いことを良いことに好き放題暴れまわる。 「傘……無いかなぁ」 エミはカバンの中をまさぐった。しばらくガサゴソしていたが、やがて諦めたように肩を落とす。 「折り畳み傘も無い。どうしよう……」 折り畳み傘か。懐かしいな。小さい頃はよく親に持たされたりしたものだ。 私は自分の青いカバンの中を見た。乱雑に詰められた教科書、参考書。どれ、んー…………ん? おや。 「あった」 カバンの最深部からひしゃげた小さな折り畳み傘が出てきた。三年間ずっと放置されていたに違いない。 「よくやった、ハル!」 私はくたびれた傘を見る。それほど大きくない、むしろふつうの傘よりもやや小振りだ。せいぜい入れて二人。どうすんのよ。 「ケンジ……まさか、三人で入ろうなんて無茶な考えは……」 「他に何があるってんだよ」 二人、か。一人だけ帰るのも忍びない。かといって一人だけ置いていくのも忍びない。 ……ああ、そうか。こんな時こそ。 「私、急用を思い出したわ。ええ、大至急。傘なんか差して行ったら送れちゃうのよ」 若干クサい演出だが、恋愛経験が皆無の私にはこれくらいしか思いつかないな。 「へえ、俺たちにくれるのか。そりゃあ助かるな」 冗談のつもりだろうか。 「その通りよ。この傘はあなた達にあげるわ」 私は手に持っていた傘をケンジのみぞおち辺りにぶつけた。 ――ダメ 「さて、私はお暇しようかしら」 私は豪雨を一瞥し、脇目も振らずに駆けた。すでに雨で白い闇と化した道路に向かって。 ――ダメ! 「おい、待てよ!」 雨は予想以上に冷たく、体の芯まで凍えてしまいそうだった。 ――止まれ! 私は、私は! ケンジ達の声を振り切るため、私は叫ぶ。 「エミ。せっかくのチャンス、無駄にしたら呪うわよ?」 ――逃げるな! わずかにほくそ笑み、成功を願う。相合傘――最高のシチュエーション、だ。……よね?
ガムを噛んでいる時のような、糸でも引いていそうなほど粘っこい音が、私の靴下と外靴の間から鳴っていた。湿っぽくて気持ち悪い。BGMは、先ほどの不協和音と、この激しい雨音だ。他には、私の荒い息遣いと、必死に鳴っている心臓の音。
暗い、灰色の世界。止む気配を見せない大粒の雨は冷酷な強風と結託し、私を容赦無く打ち付ける。これは……傘があっても濡れてたな。 ――逃げた また例の……ああ、鬱陶しい。 ――逃げてしまった ストレスかな……うん、今度カラオケにでも行こう。 ――臆病者 「ちがう!」 周りに居るのが雨粒だけで良かった。 ――違わない。友情に託けて自分を偽った、臆病者。 違う。ちがう。黙れ。だまれ! 私はひた走る。 逃げるためではない。振り切るためだ。下らない戯れ言――うんざりする。 逃げるためではない。忘れるためだ。愚かな自分――消えてしまえ。 ――上辺に居座る臆病な私。私を圧迫し、苦しめる。関係が壊れるのを恐れてる、汚い私。 「 」 その言葉は雷鳴によってかき消された。直後、世界が白く染まり、私は気を失う。 呪われた言葉――私の口から無意識に出た言葉。……無意識。そう、無意識。 |
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