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四言で綴る斜な日記。毎日更新する予定でした。
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「だから私は嫌だったのよ! 気まずくなるくらいだったら言わない方がマシ。そう思わない!?」
「私に恋愛相談されてもな……三人も……頼りにしてくれるのは嬉しいのだが……」
「黙りなさい。寝床を借りるだけだと言ったでしょう」
「自分の家で寝たらどうだね」
「言わなかったかしら。失恋中の私の部屋で堂々と寝泊まりする勇気は無いって」
「エミ君の家はどうなんだ。あの気立ての良い子なら受け入れてくれるだろう」
「気を遣わせたくないのよ……」
「ケンジ君の家ならば……」
「ゴム手袋持ってない?」
「いや、すまない」
 第一回グチ会を高村宅で開催する次第になった。私がここに押しかけた時、高村は一瞬凄まじい恐怖の色を浮かべたが、やがて私が泣いているのに気付くと、理由も聞かずに中へ入れてくれた。その後ヒステリックに暴れてしまうのも知らずに。
「私は躊躇っていたの! そんな博打、リスクが高すぎるから! だからエミに譲ったの! エミが駄目だったら挑戦しよう、って思ったから! 自分で自分が嫌になる!」
「そろそろ暇したいのだが……あっちの方とも打ち合わせをしなければ……」
「さっきから何、私の話が聞けないっての!?」
 高村はとても迷惑そうな顔をしたが、さして気にも止めなかった。
「狡猾で臆病!! そんな自分が嫌になった! 嫌になったのよ!」
「ここは託児所じゃないし、恋愛相談室でもないのだが……」
「黙って聴いてろ!」
 いよいよ高村は引き始めたが、気にしない事にする。
「汚い私……堪らなく嫌だった。そう、だからあの日、私は言った」
「 」
 小さく呟いたその言葉は、耳に届く前にインターホンによって打ち消された。
「む、客だな」
 地獄で仏と言わんばかりに駆けだしてゆく高村。ドスドスと廊下を走り、やがてドアが開く音がした。
「おや……どうしたんだい?」
 誰かと話しているようだ。
「ふむ、なるほど。では、こちらに来たまえ」
 誰かを招待しているようだ。
「あれが欲しいのか。いや、あれは私のコレクションだからな……貸すだけだ。それでもいいならば」
 何かを渡すらしい。
「ほら、よく切れるから取り扱いには重々気を付けてくれたまえよ」
 何か刃物を渡したらしい。そういえば、なぜか棚に刃物が並んでいたな。
「インテリアとしてはなかなか優れているのだがな、いざ使おうとすると勇気が要るのだよ……ん? 試し切りかね。まあそうだろうな。切れるかどうか、誰しも最初は疑うものだ。野菜か何かがいいだろうな」
 何かをまさぐる音が聞こえる。
「やはり人参などが良いだろうね。まさに定番……」
 ドサッ。何か、大きな物が倒れた音がした。
「な……! や、やめ……」
 高村が呻いている。何が起こっているんだ。私は急ぎ高村の元へ移動する。刃物、倒れた音。その二つを結びつけたくない。願わくば、予想と外れていますように。
 地下の研究室。冷蔵庫が開け放されていて、その下には赤い染みが出来た白衣。
「高村!」
 返事が無い。一刻を争う。
「こんばんは」
 丁寧に挨拶をするこの人。血塗られた凶刃を手に、狂気の笑顔を私と同じ顔に含ませながら。
「私は幸運ね。ここであなたに会えるなんて」
 アレは『私』か? 私はそんな顔しない。少なくとも、私は。
「なんで高村を? 答えなさい!」
「ガラスなら触れるのよね? ということは、ガラスの刃物ならあなたを切り裂けるという事」
 聞いちゃいない。しかし、『私』の言わんとしていることには察しが付いた。
「私を……殺しに来たの?」
「あら、正解。思い出したのかしら? あの日私達が言った事」
「ええ、思い出したわよ」
 あの日、あの時、雨に打たれながら願った事。
「あなたの口から聞きたいわね」
 そうだろうな。言いたくないが、私が言うべきだ。
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