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四言で綴る斜な日記。毎日更新する予定でした。
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 腹部。手が突き抜ける。
「すげえよな」
 感嘆の言葉を漏らしながら私の腹の中で手を振る彼。語弊があるかもしれないが、確かに「腹の中」なのだ。
「スカスカだな……ハル、痛くないのか?」
 痛いとすれば、それは彼の頭のことだろう。
「別に……感覚は無いわね」
 彼の手が、私の半透明で青白い体をこれでもかと言うほどに掻き回す。私の体は触ることが出来ない。特別な場合を除き、私への物理的な干渉は全て無意味に終わる。
「エミ、こっち来てやってみろよ。奇跡体験だぞ!」
 ついには手を激しく上下に振り始めた。
「ケンジ! ダメよ。ハルがかわいそうじゃない」
 エミは良き理解者だが、如何せんどこかズレている。
「いいじゃんか。減るもんじゃないし」
 私の神経が磨り減るよ。
「じゃあ、ハル。自分の体なんだから、少しは触ってみろよ」
 ケンジが『私』の方を向いて言った。あくまで私の方ではなく。
「えー? やめとくよ。だって痛そうだもん」
『私』が言ってることは分からないでもない。
「こっちのハルは痛くないって言ってるぜ。試すだけ試してみろよ」
「自分の体に手を突っ込むなんて正気の沙汰じゃないよ」
「んー、そうか……ま、いいけど」
「もうすぐ鐘が鳴るよ。そろそろ席に着こう」
 いい加減うざったくなってきたケンジの猛攻が止まる。さすがエミ。
 三人は各々の席に着き、次の授業の準備をする。暇になった私はそそくさと窓から退出する。
 なんでこんな事になったのだろう。虚空を漂いながら思う。
 私がこのような状態――幽霊となったのは、つい昨日の事だ。ただ、私の記憶は、昨日――特に朝から昼までの部分が欠落している。その時に何かあったのだろうと言う事は想像に難くない。
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