四言で綴る斜な日記。毎日更新する予定でした。
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× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 ほの暗い階段を抜け、案内された先は地下室だった。コンクリートで出来た灰色の壁に、薬品や実験器具や――なぜか刃物が並んだ棚、小さなテーブルが複数個。殺風景と言うほか無い。出来れば付き添いなども欲しかったのだが、あの二人はそそくさと帰ってしまった。薄情者。
PR 翌日、日差しが弱く、割と涼しげな朝。
ここで冒頭に戻るわけ。
教室内の様子も見てやろうと窓から覗いてみたのがいけなかった。おかげで、やれ触らせろ、やれ飛んでみろ、やれ壁通過してみろなどとセクハラとも取れる命令があちこちから飛んできたので、キリの良い所で逃げたわけだ。 ぶらぶらするのも何だな……昼寝をいそしむことにするか。朝だけど。 そう思って青い空へ飛ぼうとしている時だった。 「先生! まさかそんな面倒臭い解法を使うんですか? 因数分解を教えてくださったでしょう!? 応用も出来ないんですか!」 チッ。言わなくてもいい事を。 「公式にはめなければ出来ないんですか!? 教科書に書いてある事をなぞっているだけでしょう! あなたはそれでも教師ですか!」 三年ほど前から常々胸中にあった言葉だ。言う必要もない。卒業するまで――後数ヶ月我慢していれば良かったのに。確かにあの教師はクズ教師。すぐに癇癪を起こすくせに、ろくな教え方をしない。が、だからといって火を付ける事もなかっただろうに。 「じゃあお前が教えてみろ。ほら、前に来て教鞭を執ってみるがいい」 全く陰湿な……だが、首を絞めるだけだったな。 数学は私の十八番。クソ教師の授業の後で友達によく教えていた。やはり黒板の前でも『私』はいい感じで熱弁をふるう。あーあ。これで…… 「昼休みに職員室へ来い」 宣告だよ。内申が落ちる…… 『私』は親の仇を見つけたかのように先生を睨み付ける。教壇の上では激しい視線の鍔迫り合いが繰り広げられている。これ以上怒らすな。止めておけ。 「何か気に障りましたか?」 教室の中では静寂が打ち寄せている。ひっそりとしたその声すら室内に響く。 「授業態度に響くぞ。いい加減に止めておきなさい」 それは同意だが。 「分かりました。先生」 皮肉っぽく言いのけた『私』だった。その顔はどこか誇らしげ。 私が一度やってみたかったことを見事に成し遂げてしまった。いつも計画倒れだった、あの行為。今までの私はそれを実行する勇気がなかったのだ。 彼女は、私だ。それでいて、私ではない。
太陽が朱に染まり始める放課後。
特にする事も無かったため、私は一人屋上で寝ていた。屋上は実質立ち入り禁止になっている上、どの窓からも見えないため、誰にも邪魔されずに有意義な睡眠を楽しむことが出来た。が、 「今何時……」 辺りに時計は無く、時刻を伝える物は夕日くらいしかない。真っ赤ではないから、きっと5、6時なのだろう。 「寝過ごした……」 私は一度寝たらなかなか起きないからな。目覚ましか何か無いと非常に困る。ともあれさっさと帰らなければ。ここに居たってどうしようもない。 私は閉まったままの扉を通過し、歩くことなく階段を下りる。やがて一階に着き、さて帰ろうかと愚直に玄関から出ようとしている時だった。 どこからか声がする。こんな時間に残っているとすれば部活の人か先生くらいなものなのだが、その声は確かに、教室から聞こえてきた。 普通なら気にもとめない些細な事だ。しかし、この間延びした声には聞き覚えがあった。間違いなく、あの人の声。 私は急いだ。第六感が警告のサイレンをけたたましく鳴らせているのだ。 「んで、わざわざ手紙で呼び出した理由は?」 三年五組、私達の教室。そこに彼らは居た。夕日を背に問いつめるケンジ。そして、その相手は―― 「えっと……その……伝えたい事があって……」 『私』だ。太陽のせいか、『私』がものすごく赤く見える。ただ、一番赤いのは顔であった。 「手紙でも言えないような用件なのか?」 さすがに……鈍感な私でも分かる。どうする。止めるべきか? 傍観すべきか? 「あ! ハル、探したんだよ!」 エミ……来ない方がいい。きっと後悔する。 「どうしたの? 教室には誰も……」 そう言いかけて、エミは口ごもる。私の隣で中の様子を見つめるエミ。扉の窓越しに『私』とケンジが見える。エミの目には、どう映っているのだろうか…… 「なあ、ここで言わなきゃいけない事なのか?」 私より鈍感だな…… 「……その……えっと……」 『私』はうつむき、下ばかり見ている。口を開き、喉の奥から声にならぬ声を小さく発し、やがてまた口を閉じる。口をぱくぱくさせて、まるで魚のようだ。それも、陸に揚げられて死にかけのやつ。 「どうしたんだよ。お前らしくもない」 そうだね。私はそんなに床のタイルが好きな訳じゃないもんね。 「私……私っ……」 悲痛な『私』の呻き。悲愴なエミの顔。どっちも、違った意味で見たくない。 「どうした? 腹でも痛いのか。保健室まで連れてってやろうか? 肩だけなら貸してやらない事も……」 ケンジは皮肉っぽく言った。しかし、それはすでに冗談にならない。『私』の次の言葉は……多分、きっと、恐らく…… 「ケンジ……付き合って」 思い出した。あの日の事、そして、ケンジの事を。あの日、私が何を思ったのか。あの日、私は何をしてしまったのか。全て思い出してしまった。 そして解ってしまった。今日、なぜ彼女がこの行為に至ったのかを。 熟れたトマトのように赤くなった『私』の顔を見つめ、ケンジはゆっくりと、躊躇うように言う。 「ごめん。俺……お前の事が好きだから……」 は? 「え? あ……そういう事……」 少し戸惑った後、『私』は唇を噛んだ。悔しそうな目をしている。だが、何かを恨んでいるような目でもあった。 「うぅっ……ケンジ……」 私の横で、静かに嗚咽を漏らすエミ。顔を隠すこともなく、ひたすら手の甲で涙を拭っていた。 ……どうやらケンジの発言を理解していないのは私だけのようだ。なんだというのだ一体! 言っていることが矛盾している! 「ゴメンな」 申し訳無さそうに言うケンジ。 「ううん、私こそ……変な事言っちゃってゴメンね」 『私』は模造品の笑顔をケンジに見せた。どこかぎこちなく、やはり無理をしているのだなとはっきり見て取れた。 「……じゃ、帰るよ。また明日な!」 ケンジはいつも通りの笑顔を見せて、鞄を手に教室を出ようとした。 「うん、また明日!」 出来るだけ普段通り。その思いが二人の笑いに込められていた。 「……ほら、行くよ。エミ」 一部始終見てました、なんて事が知れたら危険な事になる。一刻も早くこの場から立ち去らなければ。私はさめざめ泣くエミを説き伏せて、一旦隣のクラスに隠れた。 廊下に反響する二人の足音。私とエミはその音が消えるまで息を潜めた。 だんだん思考が落ち着いてきた。そして、ある事実が私の脳に響く。 ……玉砕してしまったのだ、『私』は。私よりも数倍行動力があって、私よりも数倍勇気がある、今までずっと目標としていた『私』ですら――理想の『私』ですら……駄目だったんだ。 「まあ、仕方ないよ。私は一度諦めたんだから……」 エミのために。横で泣いている、エミのために。
「だから私は嫌だったのよ! 気まずくなるくらいだったら言わない方がマシ。そう思わない!?」
「私に恋愛相談されてもな……三人も……頼りにしてくれるのは嬉しいのだが……」 「黙りなさい。寝床を借りるだけだと言ったでしょう」 「自分の家で寝たらどうだね」 「言わなかったかしら。失恋中の私の部屋で堂々と寝泊まりする勇気は無いって」 「エミ君の家はどうなんだ。あの気立ての良い子なら受け入れてくれるだろう」 「気を遣わせたくないのよ……」 「ケンジ君の家ならば……」 「ゴム手袋持ってない?」 「いや、すまない」 第一回グチ会を高村宅で開催する次第になった。私がここに押しかけた時、高村は一瞬凄まじい恐怖の色を浮かべたが、やがて私が泣いているのに気付くと、理由も聞かずに中へ入れてくれた。その後ヒステリックに暴れてしまうのも知らずに。 「私は躊躇っていたの! そんな博打、リスクが高すぎるから! だからエミに譲ったの! エミが駄目だったら挑戦しよう、って思ったから! 自分で自分が嫌になる!」 「そろそろ暇したいのだが……あっちの方とも打ち合わせをしなければ……」 「さっきから何、私の話が聞けないっての!?」 高村はとても迷惑そうな顔をしたが、さして気にも止めなかった。 「狡猾で臆病!! そんな自分が嫌になった! 嫌になったのよ!」 「ここは託児所じゃないし、恋愛相談室でもないのだが……」 「黙って聴いてろ!」 いよいよ高村は引き始めたが、気にしない事にする。 「汚い私……堪らなく嫌だった。そう、だからあの日、私は言った」 「 」 小さく呟いたその言葉は、耳に届く前にインターホンによって打ち消された。 「む、客だな」 地獄で仏と言わんばかりに駆けだしてゆく高村。ドスドスと廊下を走り、やがてドアが開く音がした。 「おや……どうしたんだい?」 誰かと話しているようだ。 「ふむ、なるほど。では、こちらに来たまえ」 誰かを招待しているようだ。 「あれが欲しいのか。いや、あれは私のコレクションだからな……貸すだけだ。それでもいいならば」 何かを渡すらしい。 「ほら、よく切れるから取り扱いには重々気を付けてくれたまえよ」 何か刃物を渡したらしい。そういえば、なぜか棚に刃物が並んでいたな。 「インテリアとしてはなかなか優れているのだがな、いざ使おうとすると勇気が要るのだよ……ん? 試し切りかね。まあそうだろうな。切れるかどうか、誰しも最初は疑うものだ。野菜か何かがいいだろうな」 何かをまさぐる音が聞こえる。 「やはり人参などが良いだろうね。まさに定番……」 ドサッ。何か、大きな物が倒れた音がした。 「な……! や、やめ……」 高村が呻いている。何が起こっているんだ。私は急ぎ高村の元へ移動する。刃物、倒れた音。その二つを結びつけたくない。願わくば、予想と外れていますように。 地下の研究室。冷蔵庫が開け放されていて、その下には赤い染みが出来た白衣。 「高村!」 返事が無い。一刻を争う。 「こんばんは」 丁寧に挨拶をするこの人。血塗られた凶刃を手に、狂気の笑顔を私と同じ顔に含ませながら。 「私は幸運ね。ここであなたに会えるなんて」 アレは『私』か? 私はそんな顔しない。少なくとも、私は。 「なんで高村を? 答えなさい!」 「ガラスなら触れるのよね? ということは、ガラスの刃物ならあなたを切り裂けるという事」 聞いちゃいない。しかし、『私』の言わんとしていることには察しが付いた。 「私を……殺しに来たの?」 「あら、正解。思い出したのかしら? あの日私達が言った事」 「ええ、思い出したわよ」 あの日、あの時、雨に打たれながら願った事。 「あなたの口から聞きたいわね」 そうだろうな。言いたくないが、私が言うべきだ。
「その通り。だから……はい!」 暑い。蒸し暑い。ここはどこだろう。真っ暗だ。ああ、当然だ。目をつぶっているのだからな。だが、暗いのもまた良い。うん、このまま永遠に瞑っていよう。目なんか覚まさなくてもいいや。 「なんでお前を殺そうとしたんだ? あっちのハルは」 『それは……秘密』 一続きのものをブログに乗せるために切ったのですが、変なところで切れていないかどうかが気がかりです。ちなみにこれは、ある小説投稿サイトに提出したものを再編したものです。ライトノベルらしいライトノベルになっているとのご評価を戴きました。 出来ればこの続きを書いてみたいですね。半分ほどは書き上がっているのですが、いやはや続かないです。ストーリーが決まっても、なかなか動かせられない。初心者ゆえの苦悩でしょうか。 取り敢えずここに、ストーリーの連想着想を書いておきます。あくまで自分のため。 臆病な自分を克服する小説を書きたい → 自分との対峙 → 分身 → むしろ幽霊に → むしろ主人公の方を幽霊に → 幽霊って青っぽい → 電気にしたら面白いかも → 電気の設定の説明役が要る → マッドサイエンティストにしよう → ひねた主人公がいいな → だったら明るいパートナーを付けようか → 罵り合いになりそうだ → いさめる役が要る → 三角関係にするか → 女性視点の一人称をしてみたいな → ひねた女性は貧乳 → 自分が嫌だという後押しが必要 → いさめ役の女性に譲るって方式で → なんか、記憶喪失にしておくと都合が良いかも → 告白タイムも設けておこう …… 完成。 |
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